戦争記念碑という「もの資料」から40年を超える調査・研究の一端を記す論文集

戦争記念碑が語るもの

戦争記念碑が語るもの

戦争記念碑が語るもの

中京大学社会科学研究所
戦争の記憶と遺産の伝承研究プロジェクト編


A5判並製・カバー装
206頁
定価 3,300 円(本体3,000円+税10%)
ISBN978-4-902416-52-7

本書目次へ


(刊行にあたってより抜粋)
 本書は、共同執筆者でもある檜山幸夫氏が、一九八一年からの「日清戦争における戦争指導と民衆の研究」を端緒として取り組んできた戦争記念碑と慰霊に関する研究が基盤となっている。この四〇年以上におよぶ研究のなかで、研究調査の対象は、台湾出兵、西南戦争、日清戦争、北清事変、日露戦争、第一次世界大戦、日中戦争、第二次世界大戦における戦争記念碑と慰霊碑および戦歿者墓碑から、戦争博物館など戦争関係資料を収集保存している機関をも含めた「戦争関連資料群」へと拡大していった。(略)
 本研究所では、これまでの研究成果を基に二〇一七年に、近代における国民国家の特徴を時代背景と戦争記念碑の建立状況から分析することを目的とし、「戦争の記憶と遺産の伝承」研究プロジェクトを立ち上げた。(略)
 本研究プロジェクトでは、それぞれの国で戦争の記憶がどのように記録化され、それがどのように戦後に遺産化され、想起の文化の中で位置付けられているかを、国際比較を含めてグローバルな視点でみていく必要があるとの問題意識のもとで研究を進めてきた。このため、本プロジェクトの研究成果として、「戦争の記憶」を刻む戦争記念碑という「もの資料」から何が分かってくるのかという実践的歴史学の研究方法論を探る試みとして、問題提起という意味で、本書を著すことにした。(略)
 我々の研究は、戦争を媒体として建立されてきた戦争記念碑を調査し、記録することによって日本の戦歿者慰霊の有り様をみてきた。そこには、「知の記録」であり、「地の記録」である戦争記念碑、戦争慰霊碑および戦歿者墓碑がある。これらを現在のみならず、未来へと伝えていく必要があろう。時代とともに、戦争記念碑に対する価値観は変わっていく。その時々の解釈もまた記録していく必要がある。国際的な大転換点に立っている現代であるからこそ、戦後の日本が平和を希求し、平和を祈念してきたその過程を記録していかなければならないのではなかろうか。なぜならば、戦争記念碑は、現在の、未来の、ここに生きる者たちへのメッセージなのだから。


刊行案内トップへ