「日本統治下台湾における感染症と社会変容」をテーマにした共同研究集

『日本統治下台湾の防疫と衛生』

『日本統治下台湾の防疫と衛生』

『日本統治下台湾の防疫と衛生』

中京大学社会科学研究所台湾史研究センター編


A5判上製・カバー装
266頁
定価 4,950円(本体4,500円+税10%)
ISBN978-4-902416-48-0

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 明治28年に清国との戦争に勝利し、日本全権伊藤博文は清国全権李鴻章と条約を締結する。その際、「悪疫流行、土匪猖獗、所謂蛮烟瘴霧の台湾を貴国が獲得して、将た何をなさむとするや」と問う李鴻章の言葉通り、台湾は疫病が蔓延し、土匪の襲来多く、まさに瘴癘(しょうれい)の地であった。清国が蛮烟瘴霧といい手放した台湾を、日本は50年間統治することになるが、 日本が台湾を統治するために最も重要視した政策が、医師の養成や医療施設の普及などの医療政策であり、疫病対策や衛生教育の実施などの衛生政策であった。
 新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中で、日本も2020年1月に初めて感染者が確認されてから2年余が経過して未だ第6波の只中にある。現下のわが国の感染症対策をめぐって様々な問題点が浮彫りになり、医学的知見をはじめ多様な視点から検証を求める声が高まっている。そこで中京大学社研台湾史研究センターは、とりわけ日本統治下台湾において実施してきたこれらの防疫政策、感染症対策、医師の育成、台湾特有の地方病と伝染病の研究、衛生教育という「歴史の教訓」から何を学んできたかという問題意識の下に、「日本統治下台湾における感染症と社会変容」をテーマに、共同研究を進めてきた。
 本書はその研究成果を纏めた第一弾であり、台湾領有前から領有後に至るまでの「伝染病」対策について、「衛生」「防疫」「組織」「情報」「教育」をキーワードに論じた論考からなっている。
 この共同研究は継続して実施し、近代という時代が経験した感染症との闘いの軌跡を多面的に分析していくことにより、現代に繋げる歴史的教訓を提示していく。


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